POP文字の書き方
どう違う?油性ペン・マジック・マーカーの種類とおすすめ用途
1/09/2017
「油性ペン」「マーカー」「マジック」など、用語が濫立して分かりにくい各種ペンの特徴を解説したうえで、それぞれに合った用途をご紹介します。イラストや手書きPOPをどのペンで描くかお悩みの方の、ご参考になれば幸いです。
なお、このページではペン先が繊維質で着色用途の筆記具全般を「マーカー」と呼ぶことにします。
※「マジック」は1953年発売の寺西化学工業「マジックインキ」がポピュラーになったことから、油性ペン自体の呼称として使われるようになりました。
※「サインペン」の呼称は、水性マーカーに限る場合が多いようです。1963年発売のぺんてる社の水性ペン「サインペン」が呼称の由来らしいです。
※「ペイントマーカー」の呼称は、油性かつ顔料使用のマーカーに限る場合が多いようです。
目次
さきに、店舗で見かけることも多い代表的なマーカーを分類しておきます。使用している着色剤(顔料・染料)と溶剤(油性・水性・アルコール系)の種類で分けます。
※着色剤と溶剤を混ぜたものを「インク」と呼びます。
ぺんてるサインペン:ぺんてる
ポスカ:三菱鉛筆
プロッキー:三菱鉛筆 ※ポスカに比べ速乾性だが下地の隠蔽性が弱い。
紙用マッキー:ZEBRA
マッキー:ZEBRA ※油性アルコール系
コピック:Too
Hint! 油性溶剤はキシレン(有害物質VOC13を含む)を使用するものが多かったため、環境への配慮からアルコール系溶剤へ切り替える趨勢にあります。
染料系着色剤 = 溶剤に溶ける(溶解状態) ※細かい粒子の分散染料というものもある。
顔料系着色剤 = 溶剤に溶けない(分散状態)
・インク原液自体の色が鮮やか ※染み込む環境や色褪せによって、筆記後時間が経つにつれ鮮やかさは失われる。
・染料の混合は容易なので様々な色のバリエーションを造り易い
・耐水性に優れる
・耐光性に優れる ※色褪せしにくい。
・速乾性
・裏移りしにくい ※紙に染み込みにくい。
Hint! 染料系着色剤の鮮やかさは、画材店で扱っている瓶詰の染料系カラーインクを見ると実感できます。
カラーインク・ラディアント:ドクターマーチン
※瓶詰のカラーインクには染料系と顔料系の2種があります。
Hint! プリンターの場合、高級機種は高精細な描画を実現できる顔料インクを使っている。染料は滲むのであまり高精細にできない。家庭にある一般的なプリンターは染料インクを使うものが多い。
水性溶剤 = 水を主な溶剤として使用
油性溶剤 = 石油系の揮発性有機溶剤を主な溶剤として使用
アルコール系溶剤 = アルコール系の揮発性有機溶剤を主な溶剤として使用
・乾きが早い ※揮発性が高い。
・耐水性が高い
・油性の欠点であるスチロール樹脂(PSポリスチレン)を溶かす性質がない
・石油系の揮発性有機溶剤に含まれる有害物質の使用を減らすことができる
Hint! マーカーに充填されている液体は、インク =[溶剤+着色剤]と樹脂(固着剤)で成り立っています。固着性については、各溶剤に混ぜられる樹脂の粘度やその他性能で大きく変化します。なので、混ぜる樹脂を工夫することで、固着性の強い水性顔料マーカー(プロッキーなど)も作られています。また、樹脂を工夫することで水性インクでもある程度の耐水性を確保したマーカーも作られています。
Hint! 水性インクは水に溶けます。油性インクは原油から生成された軟質の素材(スチロール樹脂など)を溶かします。アルコール系インクはアルコールに溶けます。油性インクは耐水性ですが、アルコール系インクは完全耐水性ではありません。 ※ウイスキーの水割り。
Hint! 発泡スチロールなどのPSポリスチレンは油性だと溶けます。プラ板などのPEポリエチレンは油性でも溶けません。塩化ビニールは油性だと可塑剤(材料に柔軟性を与えたり加工をしやすくするために添加する物質)が溶け出します。
以下はあくまで一般的な説明でしかありません。実際には各メーカーが溶剤や樹脂を工夫することで、様々な欠点を補った性能のマーカーが販売されています。
欠点:乾きが遅く紙が水分で裏抜けする恐れがある。滲みやすい。耐水性がない。耐光性が低い。
欠点:顔料なので発色に制限があり色数が制限される。遅乾性。
欠点:溶剤が油なので発色に制限があり色数が制限される。裏移りする。耐光性が低い。スチロール樹脂を溶かす。
欠点:溶剤が油かつ顔料なので発色に制限があり色数が制限される。裏移りする。スチロール樹脂を溶かす。粘度が高い。
欠点:裏移りする。耐光性が低い。耐水性が低い。
※PS(ポリスチレン)使用素材 = スチロール樹脂(緩衝材やカップ麺容器など)
※PE(ポリエチレン)使用製品例 = プラスチック板や灯油用ポリタンクなど
※PP(ポリプロピレン)使用製品例 = ごみ容器など ※丈夫で軽い素材。
※PVC(ポリ塩化ビニール)使用製品例 = 名称にビニールと付くもの全般
マーカー着色には不向き。油性アルコール系だと表面が溶ける。水性だとはじかれる。 ※素材自体に色素を混ぜて成型したものが多い。
固着性の高い水性顔料マーカーがよい。ポリ塩化ビニールPVCで作られている場合が多いので、油性マーカーを使用すると、PVCを柔らかくするために入れた可塑剤(かそざい)が溶けだす場合がある。
定着性の低い素材なので、油性顔料マーカーがよい。
ピュアカラー(水性染料マーカー):36色
紙用マッキー(水性顔料マーカー):15色
ラッションペン No.300(水性染料マーカー):20色 ※色数の豊富な水性染料マーカーの古典。
ジュースペイント(水性顔料マーカー):24色
ぺんてるサインペン(水性染料マーカー):8色 ※実用水性染料マーカーの古典。
カラーサインペン(水性染料マーカー):12色
Hint! 色数の豊富な水性染料マーカーの需要は、速乾性と固着性が優れ作業効率の良いアルコール系染料マーカーに押されています。
ToDo:Sharpie Color Burst Permanent Markers / Sharpie Accent Tank-Style Highlighters / STABILO Pen68 / PILOTパラレルペン / Liquitex Professional Fine Paint Marker
なお、このページではペン先が繊維質で着色用途の筆記具全般を「マーカー」と呼ぶことにします。
※「マジック」は1953年発売の寺西化学工業「マジックインキ」がポピュラーになったことから、油性ペン自体の呼称として使われるようになりました。
※「サインペン」の呼称は、水性マーカーに限る場合が多いようです。1963年発売のぺんてる社の水性ペン「サインペン」が呼称の由来らしいです。
※「ペイントマーカー」の呼称は、油性かつ顔料使用のマーカーに限る場合が多いようです。
目次
- 各文具メーカーの代表的なマーカーを分類
- 顔料インクと染料インクの一般的な性質の違い
- 溶剤による一般的な性質の違い
- マーカー種別ごとの性能比較
- 各用途に適したマーカーはどれか?
- 各文具メーカー商品銘柄ごとの特徴
1)各文具メーカーの代表的なマーカーを分類|油性ペン・マジック・マーカーの種類と用途
さきに、店舗で見かけることも多い代表的なマーカーを分類しておきます。使用している着色剤(顔料・染料)と溶剤(油性・水性・アルコール系)の種類で分けます。
※着色剤と溶剤を混ぜたものを「インク」と呼びます。
a.水性染料マーカー
ラッションペン No.300:寺西化学工業ぺんてるサインペン:ぺんてる
b.水性顔料マーカー
ポスカ:三菱鉛筆プロッキー:三菱鉛筆 ※ポスカに比べ速乾性だが下地の隠蔽性が弱い。
紙用マッキー:ZEBRA
ポスカ |
プロッキー |
c.油性染料マーカー
マジックインキ:寺西化学工業マッキー:ZEBRA ※油性アルコール系
マジックインキ |
マッキー |
d.油性顔料マーカー
ペイントマーカー:三菱鉛筆 ※一部ラインナップに染料インクも使用。e.アルコール系染料マーカー
マジックインキ マジェスター:寺西化学工業コピック:Too
マジックインキマジェスタ |
コピック |
2)顔料インクと染料インクの一般的な性質の違い|油性ペン・マジック・マーカーの種類と用途
染料系着色剤 = 溶剤に溶ける(溶解状態) ※細かい粒子の分散染料というものもある。
顔料系着色剤 = 溶剤に溶けない(分散状態)
a.染料インクの利点
・透明性が高い・インク原液自体の色が鮮やか ※染み込む環境や色褪せによって、筆記後時間が経つにつれ鮮やかさは失われる。
・染料の混合は容易なので様々な色のバリエーションを造り易い
b.顔料インクの利点
・下地隠蔽性が高い・耐水性に優れる
・耐光性に優れる ※色褪せしにくい。
・速乾性
・裏移りしにくい ※紙に染み込みにくい。
左ポスカ(顔料)右コピック(染料)、隠蔽性と滲みの比較。コピー用紙使用。 |
Hint! 染料系着色剤の鮮やかさは、画材店で扱っている瓶詰の染料系カラーインクを見ると実感できます。
カラーインク・ラディアント:ドクターマーチン
※瓶詰のカラーインクには染料系と顔料系の2種があります。
Hint! プリンターの場合、高級機種は高精細な描画を実現できる顔料インクを使っている。染料は滲むのであまり高精細にできない。家庭にある一般的なプリンターは染料インクを使うものが多い。
3)溶剤による一般的な性質の違い|油性ペン・マジック・マーカーの種類と用途
水性溶剤 = 水を主な溶剤として使用
油性溶剤 = 石油系の揮発性有機溶剤を主な溶剤として使用
アルコール系溶剤 = アルコール系の揮発性有機溶剤を主な溶剤として使用
a.水性インクの利点
・裏移りしにくい ※滲みにくい。b.油性インクの利点
・固着性が強い ※プラスチックや金属にもインクが乗りやすい。・乾きが早い ※揮発性が高い。
・耐水性が高い
c.アルコール系インクの利点
・乾きが早い・油性の欠点であるスチロール樹脂(PSポリスチレン)を溶かす性質がない
・石油系の揮発性有機溶剤に含まれる有害物質の使用を減らすことができる
左マジックインキマジェスタ(アルコール系)右マジックインキ(油性)。コピー用紙使用。 |
Hint! マーカーに充填されている液体は、インク =[溶剤+着色剤]と樹脂(固着剤)で成り立っています。固着性については、各溶剤に混ぜられる樹脂の粘度やその他性能で大きく変化します。なので、混ぜる樹脂を工夫することで、固着性の強い水性顔料マーカー(プロッキーなど)も作られています。また、樹脂を工夫することで水性インクでもある程度の耐水性を確保したマーカーも作られています。
Hint! 水性インクは水に溶けます。油性インクは原油から生成された軟質の素材(スチロール樹脂など)を溶かします。アルコール系インクはアルコールに溶けます。油性インクは耐水性ですが、アルコール系インクは完全耐水性ではありません。 ※ウイスキーの水割り。
Hint! 発泡スチロールなどのPSポリスチレンは油性だと溶けます。プラ板などのPEポリエチレンは油性でも溶けません。塩化ビニールは油性だと可塑剤(材料に柔軟性を与えたり加工をしやすくするために添加する物質)が溶け出します。
4)マーカー種別ごとの一般的な性能|油性ペン・マジック・マーカーの種類と用途
以下はあくまで一般的な説明でしかありません。実際には各メーカーが溶剤や樹脂を工夫することで、様々な欠点を補った性能のマーカーが販売されています。
a.水性染料マーカー
利点:溶剤が水なので発色が良い。粘度が低く書き味が滑らか。欠点:乾きが遅く紙が水分で裏抜けする恐れがある。滲みやすい。耐水性がない。耐光性が低い。
b.水性顔料マーカー
利点:溶剤が水なので発色が良い。裏移りしない。耐光性。欠点:顔料なので発色に制限があり色数が制限される。遅乾性。
c.油性染料マーカー
利点:粘性があり固着性が非常に高い。耐水性。速乾性。欠点:溶剤が油なので発色に制限があり色数が制限される。裏移りする。耐光性が低い。スチロール樹脂を溶かす。
d.油性顔料マーカー
利点:粘性があり固着性が非常に高い。耐水性。速乾性。耐光性。欠点:溶剤が油かつ顔料なので発色に制限があり色数が制限される。裏移りする。スチロール樹脂を溶かす。粘度が高い。
e.アルコール系染料マーカー
利点:粘度の調整が可能で油性よりも多くの色数を実現できる。速乾性。原油から生成されるスチロール樹脂などの素材を溶かさない。欠点:裏移りする。耐光性が低い。耐水性が低い。
左マッキー(油性染料)中央ポスカ(水性顔料)右コピック(アルコール系染料)。発色や滲みの比較。コピー用紙使用。 |
5)各用途に適したマーカーはどれか?|油性ペン・マジック・マーカーの種類と用途
・紙 =
水性マーカー以外は裏移りする。丈夫な紙あるいは裏移りを気にしない用途なら油性アルコール系でもよい。表面がポリエチレンなどでコーティングされている商品パッケージなど吸水性の無い紙の場合、固着性の高い顔料系マーカーを選ぶ。・プラスチックPS =
油性マーカーだと溶けるので、アルコール系マーカーを選ぶ。※PS(ポリスチレン)使用素材 = スチロール樹脂(緩衝材やカップ麺容器など)
・プラスチックPE/PP =
油性マーカーがよい。※PE(ポリエチレン)使用製品例 = プラスチック板や灯油用ポリタンクなど
※PP(ポリプロピレン)使用製品例 = ごみ容器など ※丈夫で軽い素材。
・ポリ塩化ビニールPVC =
軟質と硬質があり、軟質の場合に油性マーカーを使用すると、PVCを柔らかくするために入れた可塑剤(かそざい)が溶けだす場合がある。その場合はアルコール系マーカーか固着性の高い水性マーカーを選ぶ。※PVC(ポリ塩化ビニール)使用製品例 = 名称にビニールと付くもの全般
・蝋燭(ロウソク) =
アルコール系マーカーか固着性の高い水性マーカーがよい。石油由来の成分など何らかの油成分を含んでいるので油性マーカーだと溶けます。・ゴム =
水をはじく性質なので油性マーカーがよい。耐水性を考慮する場合、顔料系を選ぶ。
・シリコン =
マーカー着色には不向き。油性アルコール系だと表面が溶ける。水性だとはじかれる。 ※素材自体に色素を混ぜて成型したものが多い。・木材 =
固着性の低い水性染料マーカー以外なら何でもよい。あとは耐水性などを考慮してマーカーを選ぶ。染料系だと滲みが気になる場合があるので、その場合は顔料系のものを選ぶ。・布/本革 =
洗濯時などの耐水性を考慮すると油性顔料マーカーがよい。
・人工皮革 =
固着性の高い水性顔料マーカーがよい。ポリ塩化ビニールPVCで作られている場合が多いので、油性マーカーを使用すると、PVCを柔らかくするために入れた可塑剤(かそざい)が溶けだす場合がある。
・金属/ガラス/石 =
定着性の低い素材なので、油性顔料マーカーがよい。▶お店のPOPとかを書くときに重宝する、黒い紙に書けるペンのご紹介。
6)各文具メーカー主な商品銘柄ごとの特徴|油性ペン・マジック・マーカーの種類と用途
■三菱鉛筆
ピュアカラー(水性染料マーカー):36色
ポスカ(水性顔料マーカー):15色(+ナチュラルカラー7色) ※ポスターカラーのマーカー。
プロッキー(水性顔料マーカー):15色 ※ポスカより速乾性、透明性。
ピースマーカー(油性染料マーカー):8色
PAINT MARKER(油性顔料マーカー):15色
■ZEBRA
紙用マッキー(水性顔料マーカー):15色
マッキー(油性染料マーカー):12色 ※万能マーカー定番。メーカー記載では油性染料(アルコール系)。
マッキープロ 特殊用途DX(油性顔料マーカー):2色
■寺西化学工業
ラッションペン No.300(水性染料マーカー):20色 ※色数の豊富な水性染料マーカーの古典。
アクアテック(水性顔料マーカー):13色
マジックインキ(油性染料マーカー):15色
マジックインキ マジェスター(アルコール系染料マーカー):12色
■PILOT
ジュースペイント(水性顔料マーカー):24色
ツインマーカー(油性染料マーカー):12色
■ぺんてる
ぺんてるサインペン(水性染料マーカー):8色 ※実用水性染料マーカーの古典。
ぺんてるペン N50(油性染料マーカー):3色
■サクラクレパス
カラーサインペン(水性染料マーカー):12色
ペンタッチ(油性染料マーカー):12色
■トンボ鉛筆
プレイカラー2(水性染料マーカー):36色
■Too
コピックスケッチ(アルコール系染料マーカー):358色 ※色数の豊富さでイラストレーターに人気。
Hint! 色数の豊富な水性染料マーカーの需要は、速乾性と固着性が優れ作業効率の良いアルコール系染料マーカーに押されています。
ToDo:Sharpie Color Burst Permanent Markers / Sharpie Accent Tank-Style Highlighters / STABILO Pen68 / PILOTパラレルペン / Liquitex Professional Fine Paint Marker
0 コメント